日本ではtotoなどのスポーツくじ、競馬・競輪・競艇・オートレースなどの公営ギャンブルだけを、合法のギャンブルとして遊ぶことができる。
また、厳密にはギャンブルではなく遊戯という扱いであるパチンコもこれらの合法ギャンブルのなかに加えてしまっていいだろう。
日本国によって認可されている合法のギャンブルは、税収などにつながることもあり「貴重な財源」という観点から見ることもできるため、一つの国家的なプロジェクトである。
これらの国家的プロジェクトである合法ギャンブルは、最近では、パチンコ以外のほぼすべてが「オンラインギャンブル」としてアップデートされており、賭け事の現場に足を運ばずとも賭けられる利便性の高いシステムが採用されてもいる。オンライン化することで、より効率的に「財源の確保」が可能になったのだ。
さて、日本に「合法」のギャンブルがあるということは、当然ながら「違法」のギャンブルも存在していることを忘れてはならない。
古くは賭け麻雀、ボウリング賭博などの「賭場やフィジカルな要素と切り離せないギャンブル」だけが、違法ギャンブルとして存在していたのだが、近年は違法ギャンブルにもオンライン化の波が押し寄せている。
現在、代表的な違法ギャンブルといえば、やはり「オンラインカジノ」が真っ先にやり玉にあげられるだろう。
オンラインカジノのような違法のオンラインギャンブルは、今後法改正がされない限りは遊ぶだけで賭博法に触れてしまう危険なギャンブルのままである。
では、今後、日本においてオンラインカジノのような違法のオンラインギャンブルが合法化するような法改正は、果たしてありうるのだろうか?
法改正を通して合法ギャンブルが増えることは考えられない
結論から言うと、法改正などを通していま違法であるギャンブルが合法ギャンブルになるということは考えられない、というのが私の考えになる。
そのなかでも、現在のオンカジのようなオンラインギャンブルが法改正で合法になる未来は、輪をかけてさらに、ほとんど絶望的だと断言してもいいかもしれない。
オンカジが代表的な違法オンラインギャンブルをめぐる法改正について考えて行くためには、おさえておきたいポイントが二つある。
一つは、現在認められている合法ギャンブルが「胴元として国がその利権を独占する」という国家的プロジェクトである、ということだ。
もう一つのポイントは、「リアルカジノの合法化とその国家的利権」のほうが国家的プロジェクトにおいては重要視されている、という現在進行形の事情である。
簡単にまとめるならば、現在違法とされているギャンブルを合法化することに関しては、国家としてはなんのメリットもないということに尽きるだろう。メリットがない以上は法改正は期待できない、というじつにシンプルな話だ。
むしろ、国家のメリットを考慮すると、法改正を通して現在のオンカジのようなオンラインギャンブルに対して行う可能性があるのは「厳罰化」の方向の法改正ということになるだろう。
仮に法改正でオンカジなどのオンラインギャンブルが合法化される未来を考えるならば、「すべての違法オンラインギャンブルの厳罰化」が完了し、いま存在するすべての違法オンラインギャンブルが駆逐され、全滅したあとでなければ、それは到底起こりえないのではないだろう。
そして、そのとき合法化されるオンラインギャンブルは、オンライン馬券などと同じシステムの「国家によって管理されたオンラインギャンブル」であり、現在遊べる違法オンラインギャンブルとはまったく違った形のものでしかないはずだ。
また、これも重要な視点だが「違法ギャンブルを全滅させる」というような法改正も、その実践も、おそらくは実現されることはない。
全滅が起こりえない以上、全滅後の世界でしか起こらないことは、当然起こるはずもない。オンラインギャンブルの合法化としての法改正というのは「夢物語」としても、そもそも破綻しているといわざるをえないのだ。
違法のオンラインギャンブルは国家の利益と敵対する
合法ギャンブルを国家胴元の利権である以上、その合法ギャンブルに使われるはずの賭け金を奪う可能性があるすべての違法ギャンブルは、国家の利益と敵対するものになる。
この敵対関係こそが「法改正が起こらないこと」を理解するための第一のポイントの勘所であり、国家が違法のオンラインギャンブルを認めない最大の理由でもある。
ギャンブルをする国民の数にも、一人当たりの国民が賭けられる賭け金にも、限界というものがある。合法ギャンブルを通した「財源」の確保は、この無尽蔵ではなく限界がある資本の回収によってのみ行われる。
違法のギャンブルの存在は、国家的プロジェクトの観点から見ると、この「限りある賭け金」を奪っていく厄介な存在でしかない。
単純化すると、違法ギャンブルが一つでも多ければその分だけ日本国がギャンブルを通して獲得できたかもしれない「財源」が減っていくという悩ましい仕組みになっているのだ。
現在、違法のギャンブルのなかでエース級の力を持っているのが、オンカジに代表されるオンラインギャンブルである。
オンカジという違法ギャンブルによって奪われる可能性がある「限界がある賭け金」は、インターネット以前の従来の違法ギャンブルであった賭け麻雀などとは比較にならないような量に膨れ上がっている。
つまり、違法のオンラインギャンブルというのは、日本のギャンブル史においては「最大の敵対者」といえるほどの、国家プロジェクトに対する強大な敵なのである。
そんな国家の利益を損ねる可能性しか持っていない違法のオンラインギャンブルに対して「法改正で合法化の未来があるのでは?」などと考えるのは、あまりにも楽観的な見方である。
違法のオンラインギャンブルに対して法改正が行われる場合、「根こそぎ摘発する」という方向性での、徹底的な厳罰化、排除と駆逐の法改正が絶対に先行することになるだろう。
現在の日本には、違法のオンラインギャンブルを根こそぎ摘発するような賭博法が存在しない。そのため「法改正」の会議では、まず間違いなく「いかにしてオンラインギャンブルを摘発するための法を作るか?」こそが主要な議題なのである。
リアルカジノの誘致が国家的プロジェクトとしては優先されている
法改正を通して日本に合法のギャンブルが増える場合、何よりも優先されているのは「リアルカジノ」の誘致、合法的なカジノ運営の道であり、リアルカジノの是非をめぐっては多数の反対を受けながら、現在進行形のプロジェクトが動いている段階にある。
このプロジェクトが進行中である限り、この問題が解決するまではオンカジなどのオンラインギャンブルの合法化などという未来はまず考えることができないだろう。
リアルカジノの誘致は「財源確保」として活用できるかもしれない久方ぶりの合法ギャンブルとして、現在「通るか通らないか」という瀬戸際にあるが、その決定がどこまで先延ばしされるのかわからない曖昧な段階にある。
この「リアルカジノの誘致」という観点から見ても、オンカジなどの違法のオンラインギャンブルの存在は、「国家の利益」的にはそれ自体が邪魔ものである。
なぜ邪魔かというと、違法のオンラインギャンブルが存在することによって「違法であることにさえ目をつぶれば、国内にいてももうすでにカジノで遊べてしまう」という選択肢を、国民が持ってしまうことになるからだ。
要するに、違法のオンラインギャンブルがあるというだけで「オンカジで遊べる環境なのに、わざわざ交通費と入場料を払って日本のカジノなんて行きたいかな?」という冷めた視点を許してしまうのだ。
オンカジに代表される違法オンラインギャンブルというのは、久々の「国家プロジェクトとしての合法ギャンブル」としてのリアルカジノをなんとしてでも成功させたい日本の国策にとっては、相当な問題をはらんでいる頭の痛い選択肢である。
また、「合法ギャンブルを一つ増やす」ということは「その分だけ運営費がかかる」という事実も忘れるべきではない。国家の財源的にも、現在の4大公営ギャンブル以上に合法のギャンブルを増やすことには、大きなリスクが伴う。
このどう転ぶかわからない運営リスクが考慮されていることで、おそらく進行中の国家プロジェクトに「待った」がかかっているというような状況もあるだろう。運営については、問題点のほうが数多く指摘されてもいる。
前段での結論とも重なるのだが、「リアルカジノの合法化」と「オンラインカジノの厳罰化」がすべて完了したあとにしか、合法オンラインギャンブルの道は開かれることはないだろう。
そして、その道は二つそれぞれに解決困難な隘路に入っており、障害だらけでほぼ閉ざされているというのが現状ではないだろうか。
オンラインギャンブルの合法化の法改正についてのまとめ
現在違法のオンラインギャンブルの合法化をめぐる、法改正についてのまとめは以下のようになるだろう。
- 違法オンラインギャンブルは国家を悩ませる最大の敵である
- 全滅を目指した厳罰化という方向の法改正だけが予想できる
- 合法化されたオンラインギャンブルは国家の管理下におかれる
現在、違法のオンラインギャンブルは、どこまでいっても違法でしか遊べないままだろう。
合法ギャンブルが国家の利益に深く関わる国家的プロジェクトである以上、違法のオンラインギャンブルを日本が許すということは、まず考えられない。
合法のオンラインギャンブルは、競馬のオンライン馬券などのように「国家の管理下」におかれてはじめて成立するものである。
オンラインギャンブルが合法化される暁には、現在遊べているような違法オンラインカジノのような場所はすべてなくなっていなければならないが、そのような全滅後の世界ははっきりいって現実的ではないし、到来することもないはずだ。
違法オンラインギャンブルに対する法改正について確実に言えることは、その存在を許さない方向にしか議論が発展していかない、ということに尽きるだろう。
法改正による違法オンラインギャンブルの合法化などという「夢」は、見るだけ時間の無駄である。
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